| 「何」は「なに」と「なん」の読み方について
漢字の読み方についての質問には「一つ一つ覚えましょう」と答える方法があり、むろん、これが一番の正攻法だと言えるでしょう。しかし、常用漢字だけでも1945ありますし、複数の読み方があるものも少なくありませんから、この正攻法だけではなかなか漢字を覚えきれない。機械的に読み方を知り、意味もわかるという方法があったら、日本語学習者にとっては何よりのことでしょう。
そこで、「何」には次の場合が考えられます。
1.「何~」の形で用いられる時。
2.単独で用いられる時。
3.「~何」の形で用いられる時。
このうち3は例がないようですから除きます。
1.「何~」の形で用いられる時。
1の場合の読み方は、「なに」「なん」のいずれもあります。
(1)「何」を「なに」と読ませる場合は、「何」が次の語「~」の内容、様子や名前を問うものである時です。その例としては、次のようなものがあります。
①何新聞(なにしんぶん)
②何事(なにごと)
③何者(なにもの)
④何係(なにがかり)1)
⑤何航空(なにこうくう)2)
(2)これに対し「何」を「なん」と読む場合は、「何」が次の語、すなわち「~」にくる語の数量を意味しています。例えば、次の①~⑤などがあげられます。3)
①何時(なんじ)
②何円(なんえん)
③何枚(なんまい)
④何冊(なんさつ)
⑤何個(なんこ)
以上(1)(2)の「何」は語そのものからそれぞれの読み方を知ることができます。
(3)ところが語によっては「なん」「なに」2つの読み方があり、語それだけからはどちらの読み方かわからないものがあります。次を見てください。
①何人(なにじん・なんにん)4)
②何色(なにいろ・なんしょく)
③何語(なにご・なんご)
上の①~③の例でも前述の(1)(2)の読み方規則、つまり名前、内容なのか数量なのかということが選択の基準であることを確認してください。5)
ここで問題となるのは、(3)のような場合、どちらを読むかを決める要数は何かということです。これは、前後の関係、すなわち文の中で判断されます。次の例の「何人」の読み方は迷うことがありません。
a A:学生は何人いますか。
B:15人です。
b A:あそこに背の高い人がいますね。あの人は何人ですか。
B:さあ、日本人ではないと思いますが。
これまでのことをまとめますと、「なに」と「なん」との読み分けは、合成語の場合、次の特徴があります。
1)意味の違い、すなわち内容・名前を意味するが、数量を示すかによる。
2)語だけから読み方がわかる場合と、文の中でわかる場合がある。
2.単独で用いられる時。
それでは2について考えましょう。「何」が単独で用いられる、つまり助詞がすく続く時は助詞によって「なん」か「なに」かが選択できます。
(1)「が」「を」「から」「まで」「も」「は」が続く時は「なに」と読みます。6)
①あそこに何がありますか。7)
②お昼に何が食べたいですか。8)
③何をお飲みになりますか。
④何から何までやっていただいて、どうもありがとうございました。
⑤何もございませんが、どうぞごゆっくり。
⑥何はなくとも……。
(2)「の」の前では「なん」と読みます。
①今日は何の話ですか。
②びっくりの話なので何の準備もしていませんでした。
(3)「で」の前の「何」は意味により読み分けています。
① A:大阪へは何で行くんですか。
B:飛行機です。
② A:こんなところへ何で行くんですか。
B:仕方がありません。上司の命令ですから。
上の①のように、「何」が「乗り物」の意味の時は「なに」「なん」のいずれでも読めます。しかし、②のように、「何」が原因・理由を示す時は「なん」としか読みません。
(4)「か」「に」の前の「何」は「なに」「なん」どちらも使っています。しかし、「なに」のほうが落ち着いた印象を与えることもあります。例を見ておきましょう。
①なにか・「なんか」変に思われます。
②お母さん、何かない(?)9)
③晩ご飯、何にする(?)
(5)「と」が続く場合は次の例があります。
1)「と」のみが続く場合は「なに」「なん」いずれもあります。
例 実験にはなに・なんと何が必要ですか。
2)「何という」は「なんという」と読む。
例 あれはなんという花ですか。
日本語教育という点から考えますと、最初「何」の読み方の法則を教えるかどうかは、個々の事例によると思います。2の場合などは個々の事例をひとつひとつ覚えていかせたほうがいいかもしれません。
注釈
1)「私はクラスの給食係なの。あなたは何係(?)」などの使い方をします。
2)「今度の旅行は何航空で行くの」などの使い方があります。
3)「何曜日」は「なんようび」というのが普通です。これは本来は名前を問う語ですから「なに」と読んでいたのでしょうが、例外となっています。この原因は発音のしやすさか、とも考えられますが、よくわかりません。
4)「何人」は「なんびと」と読む例がありますが、これは「なんびとたりとも~」のような言い方でしか使われていないので、ここでは除外します。
5)「何」を「なに」を読んだ場合、続く漢字は訓読み、「なん」と読んだ場合は音読みが基本となっています。
6)「何も」は「なんも」と読むことがありますが、共通語の範囲では「なにも」のほうがよいでしょう。
7)この「が」は主体を示しています。
8)この「が」は対象を示しています。
9)「なにかにつけて目の敵にする」は慣用と考えます。
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